ジャック・ジョンソン(Jack Johnson 以下、ジャック)はハワイ出身のアーティスト。
海、風、大地…大自然を感じるゆったりとしたアコースティックサウンドで、“最高にくつろげる音楽”として世界中から愛されています。
じっくり耳を傾けるもよし、BGMとして流すもよし、いろんな楽しみ方ができるのが人気の理由ですね。
ジャックは、有名なサーファーの家庭に生まれ、「世界で一番凶暴で美しい波」として有名なオアフ島のビーチのすぐ近くで育ち、5歳のころからサーフィンに親しんでいました。
10代にはプロサーファーとなり、その腕前から期待を集めていましたが、サーフィン中の事故で頭を150針以上縫うほどの大怪我を負ってしまい、プロの道を断念。
そんなジャックが夢中になったのは、サーフィンと同じく大好きだった映像製作と音楽。
カリフォルニアの大学卒業後にサーフィン仲間と撮ったジャックの作品は、サーフィンの激しさを強調したそれまでの映像とは異なり、大自然のなかでゆったりとした時間が流れる映像。そして、映像で流れていた美しいBGMは、ジャックが自ら演奏したアコースティック音楽でした。
ジャックの素晴らしい音楽にいち早く注目したのは、以前から友人として親交があった Gラヴ(G. Love & Special Sauceを率いて94年にデビューした米国フィラデルフィア出身のアーティスト)。
Gラヴは自らのアルバムのなかで、ジャックが作った曲で共演して音楽ファンの注目を集め、ジャックがソロデビューできるようサポートしてくれました。
その共演曲がこちら。ブルーズとヒップホップが融合したノリのいい曲です。
この曲のヒットを手掛かりに、ジャックはデビューのチャンスをつかみます。
“Philadelphonic” G. Love & Special Sauce 1999
- 1stアルバム – Brushfire Fairytales(2001)
- 2ndアルバム – On And On(2003)
- 3rdアルバム – In Between Dreams(2005)
- 映画サントラアルバム – Sing-A-Longs and Lullabies for the Film Curious George(2006)
- 4thアルバム – Sleep Through The Static(2008)
- 5thアルバム – To The Sea(2010)
- 6thアルバム – From Here To Now To You(2013)
- 7thアルバム – All The Light Above It Too(2017)
- 2021年4月、新曲「If Ever」を発表
1stアルバム – Brushfire Fairytales(2001)
2001年、ジャックはデビューアルバムをリリース。
レゲエ、ブルーズ、ヒップホップをベースにしたジャックのミクスチャーサウンドはまたたく間に音楽ファンのあいだで話題になります。インディーズからメジャーへ移り、結果、ミリオンセラーの異例の大ヒットに。
ジャックの音楽は、サーファーが海の上で過ごす「波を待つ時間」ように、メロウで(落ち着いた感じで)レイド・バックした(ゆったりとした)アコースティックなサウンド。
また、ハワイのトロピカルなアルバムなのに「どしゃぶりの雨」のジャケットが印象的です。ハレの日ではなく日常のなかにこそ、幸せや楽しさを見つけて行こうというジャックのメッセージがいいですね。
1stアルバムから、サーフィン音楽というジャンルにとどまることなく、音楽ファン全体のハートをつかみました。
“Flake” では、Gラヴとともにジャックのデビューをサポートしたベン・ハーパー(Ben Harper 米国のグラミー賞アーティスト)がスライドギターで参加。今でもライブで盛り上がる、ファンに人気の1曲です。
“Flake” – Jack Johnson
2ndアルバム – On And On(2003)
1stアルバムの大成功によって自らのレーベル「Brushfire Records」を立ち上げます。2nd アルバムはそこからのリリース。前作で多くのファンを獲得したジャックの新作は、リリースされるといきなり全米3位の好スタート。2004年にはフジロックにも出演しました。
本作にはジャックのデビューのきっかけとなったGラヴとの共演曲「Rodeo Clowns」の別バージョンが収録されています。聴きくらべてみると面白いですよ。
“The Horizon Has Been Defeated” – Jack Johnson
3rdアルバム – In Between Dreams(2005)
人気がどんどん高まるなか、ジャックはマイペースに音楽制作を続けます。3rdアルバムは全米2位を獲得。ほか、英国、豪州など、英語圏で大ヒットし、世界的な評価を受けます。
マンゴーの木とジャックのジャケットがかわいいですね。
「僕たちは一緒にいる方がいいんだよ」と繰り返す素朴なラブソングは、ジャックの優しいボーカルがよく似合います。
Jack Johnson – Better Together
映画サントラアルバム – Sing-A-Longs and Lullabies for the Film Curious George(2006)
3rdアルバムリリースの翌年には、ジャックの子供も大好きなキャラクター「おさるのジョージ」の映画のサウンドトラックアルバムを手掛けます。サントラとはいえ、内容はジャックの「4thアルバム」と言えるほどの充実作。ゲストにはおなじみのGラヴやベン・ハーパーも名を連ねます。本作は全米1位を獲得し、ジャックの人気はいよいよ不動のものとなりました。
「Upside Down」は、ジャックと「おさるのジョージ」のやりとりが楽しく、ファミリーにも人気のかわいいPVです。
Jack Johnson – Upside Down (Official Video)
4thアルバム – Sleep Through The Static(2008)
本作でジャックは、自分の子供たちに想いを馳せ、彼らが大人になるまでに体験する出会いや別れ、喜びや悲しみについて歌っています。これまでに比べると内省的なアルバムです。
驚くことに、本作はほとんど宣伝せずに全米1位を獲得。リリースを重ねるごとにジャックは熱いファンを増やし続けています。
「If I Had Eyes」はバンド色が強い1曲。スタジオシーンのPVもいいですね。
Jack Johnson – If I Had Eyes (Official Video)
5thアルバム – To The Sea(2010)
内省的な前作から変わって、人生を楽しむポジティブな心意気にあふれた明るいアルバム。エレキギターがやや多め。また、以前からジャックはギターだけでなくいろんな楽器を使っていますが、本作ではレトロな電子楽器(メロトロン)などさらに多くの楽器を使用。アルバム全体にただよう懐かしい安心感に一役買っています。
「You And Your Heart」はジャック自身がサーフィンを楽しむ姿がフィーチャーされていて、海・空・風がとにかく気持ちいいPVです!
Jack Johnson – You And Your Heart (Official Video)
6thアルバム – From Here To Now To You(2013)
「君を見つけたから僕はすべてを手に入れた」なんてラブソングから始まるこのアルバムもまた、自然体のジャックが楽しめる作品です。前作同様、ポジティブで元気な曲が多いアルバムです。エレキギターは減ってアコースティックへ回帰しています。
メロディーがキャッチーな曲、アップテンポの曲など、全体的に粒揃いなので、1st、2nd、3rdに並んでファンから人気の高いアルバムです。
「I Got You」の冒頭には、ファンには見覚えのある光景が広がります(3rdアルバムの…)。
Jack Johnson – I Got You (Official Video)
7thアルバム – All The Light Above It Too(2017)
前作同様アコースティック要素が強く、リラックスできる曲が中心です。しかし、これまでと違うことは、環境問題(プラスティックゴミ問題)やトランプ大統領(当時)への反対姿勢を明確にした政治的メッセージが色濃いこと。そのせいか、セールスは過去作に比べると縮小。音楽と政治はデリケートで難しいですね。歌詞を気にしない方はいつものジャック作品として楽しめますよ。
Jack Johnson – You Can’t Control It (Official Audio)
2021年4月、新曲「If Ever」を発表
ハワイ出身の女性アーティスト ポーラ・フンガ(Paula Fuga)の新アルバム「Rain On Sunday」に収録されているジャックとのデュエット曲が発表されました。ハワイアンでピースフルな1曲。2人ともあたたかな歌声でなかなかよい相性。ポーラのアルバムはジャックのレーベルBrushfire Recordsから5月にリリース予定です。
“If Ever” – Paula Fuga with Jack Johnson (featuring Ben Harper) – Lyric Video
ジャックの住むハワイは、環境問題に加え、コロナ禍によって観光産業が大きなダメージを受けています。ジャックは自ら寄付したり、基金を立ち上げたり、オンラインでチャリティを募ったりして、音楽による社会活動を続けています。
新アルバムの予定はまだ公表されていませんが、楽しみに待つことにしましょう。
今週はこんな感じです。
また会いましょうね。
