今日は、パンク・ロックのお話です。
パンク・ロックとは、1970年代後半に米国と英国で流行した、少ないコードで構成されたシンプルでキャッチーなロックで、反体制的なメッセージが込められていることが多い音楽です。
カンタンに言うと、「世の中にうっぷんがたまってる若者が、演奏がヘタッピでもやりたいようにやってみた音楽」です。
1960年代後半、英国では、巧みな演奏技術で聴かせるハードロック、高価な機材が必要なプログレッシブ・ロックが盛り上がっていました。また、米国では、精神世界に向かうサイケデリックロックが人気。
しかし、都会では「どれにも共感できない!自分で楽しみたい音楽をやる!」と考える若者たちが、自分の家のガレージ(車庫)でバンド活動をはじめます。
これがパンクの源流となっていきます。
パンクの原型、プロト・パンク
1960年代後半、米国では、自宅のガレージ(車庫)で練習するアマチュアバンド、「ガレージ・ロック」バンドがたくさん生まれました。1964年以降、英国で人気を博したビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーを聴いて、「自分たちでもバンドやりたい!」と刺激を受けた若者たち。
そのガレージ・バンドのなかから、パンク・ロックの原型となる4組の”プロト・パンク”バンドが現れます。
THE VELVET UNDERGROUND – THE VELVET UNDERGROUND & NICO(1967)
The Velvet Underground, Nico – Sunday Morning
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドは、米国ニューヨーク出身で、中心人物はルー・リード。文学的な歌詞と実験的なサウンドで、アート・ロックとも呼ばれました。同性愛やSMなどの性におけるタブーを扱い、「タブー」を避けずに問題提起する姿勢は、のちのパンク精神に影響を与えました。
THE STOOGES – THE STOOGES(1969)
The Stooges – I wanna be your dog (1969)
ザ・ストゥージズは、「ゴッドファーザー・オブ・パンク」と呼ばれるイギー・ポップが在籍した米国デトロイトのバンド。イギーは注目を集めるために、ステージにダイブしたり、ステージ上にガラスをまいて転がったりと、過激なライブパフォーマンスが話題を呼びました。
MC5 – KICK OUT THE JAMS(1969)
MC5- Kick Out The Jams (Extended)
MC5は米国デトロイト出身。同郷のザ・ストゥージズと仲が良く、兄弟バンド的な存在です。汚い言葉をステージ上で叫んだり、政治的な扇動発言を繰り返したりと、攻撃的なライブパフォーマンスが若者の共感を集めました。
NEWYORK DOLLS – NEWYORK DOLLS(1973)
New York Dolls – Personality Crisis
ニューヨーク・ドールズは、ニューヨーク・パンクの原点的なバンド。音楽性はグラム・ロックに近いですが、ケバケバしく奇抜なファッションやメイクが、パンクに影響を及ぼしました。
実は、ニューヨーク・ドールズの2ndアルバム時のマネージャー、マルコム・マクラレンが、のちにロンドン・パンクとセックス・ピストルズの仕掛け人となる重要人物なんです。
ラモーンズが登場! ニューヨーク・パンクとともにパンク・ロックが産声をあげます
RAMONES – THE RAMONES(1976 )
Ramones-Blitzkrieg Bop
ラモーンズは、ビートルズやビーチボーイズの影響を受けたキャッチーな曲が多く、コードは3〜4つのみのシンプルな曲。シンプルでキャッチーな曲調は、後進のパンクバンドに大きな影響を与えます。
ラモーンズのほかにも、ニューヨークではさまざまなアーティストが人気を博し、ムーブメントになっていきます。ニューヨークのダウンタウンにあったライブハウス「CBGB」がその拠点でした。
PATTI SMITH GROUP
TELEVISION
DEAD BOYS
セックス・ピストルズが登場! ロンドン・パンクが盛り上がり、パンク・ロック時代が花開きます!
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ニューヨーク・ドールズのマネージャーを務めていたマルコム・マクラレンが、ニューヨーク・ドールズ解散後、英国に戻り、恋人のファッションデザイナー ヴィヴィアン・ウェストウッドと仕掛けた新バンドが、セックス・ピストルズ。
ブティック「セックス」(店名)の従業員と常連客だった不良少年たちで結成。反体制的な歌詞と斬新なファッションはすぐに世間の話題となり、注目を集めます。
しかし、あまりにメンバーの素行が悪く、デビューアルバム1枚で解散…。
SEX PISTOLS – NEVER MIND THE BOLLOCKS(1977)
Sex Pistols – God Save The Queen
Sex Pistols – Holidays In The Sun
Sex Pistols – Pretty Vacant
Sex Pistols – No Feelings
セックス・ピストルズの米国進出は失敗に終わります。しかし、ほかのロンドン・パンクのバンドたちは、米国で成功をおさめます。
THE CLASH
THE DAMMED
THE JAM
1978年にセックス・ピストルズが解散すると、ロンドン・パンク自体はあっさり終焉を迎えます。
その後、英国ではパンクからポスト・パンク/ニュー・ウェイヴへ変化。
80年代にはさらに攻撃的なハードコア・パンクが生まれ、90年代にはグランジというカタチでパンク・ロックが復権。
パンク・ロックは、次世代のバンドによってカタチを変えながら、現在まで受け継がれていきます。
いかがでしたか。
今日は、ロックファンにも聴いてほしいパンクバンドのご紹介でした。
また会いましょうね。